運転資金の借り入れをメインバンクに相談したが
一時はプロモーションカフェの店舗売り上げが持ち直して安堵していたが、再び売上が低下し始めていた。
売上・利益計画と実績の対比表、そして資金繰り表を、勇気を出して直視し、先の見通しに真剣に向き合うと、なんとも厳しい現実が立ちはだかっていた。
数ヶ月後に資金繰りが厳しくなることが予想されたので、まずはメインの銀行に行き、現状を説明するとともに、運転資金としての新たな借り入れを相談した。
担当者はとても親身になって話しを聞いてくれ、なんとかしようと考えてくれた。
早速検討のための今後の「売上見込み」と「資金繰り表」の提出を求めてきた。
このような状況になって要求されるのは月々の資金繰りではなく、日々の出入金がわかる「日繰り(ひぐり)表」だ。これにより月の途中の資金残高がわかり、タイムリーに手を打っていくことができる。
早速管理本部に作成を依頼し、数日後に再度説明に訪問した。
その後、数回の面談の中ではさらに売り上げを確保する手立て、さらなる経費の削減、支払いの繰り延べなど、様々な提案がなされた。
しかし当社の場合には打てる手立てはすでに打っており、定期的に説明を受けていた担当者も、そのことは十分に理解していた。
最終的には「社長頑張ってください!」とエール送ってくれつつも新たな融資はできないという結論だった。
保険や税金の支払い留保は一時凌ぎでしかない
それと並行して社会保険料や税金の支払いを止めればいいという話を聞いていたので社会保険事務所や税務署にも足を運び相談してみた。
しかしそんな簡単なものではなかった。
待ってくれても数週間、遅延分の分割といってもせいぜい2〜3ヶ月、約束手形を振り出してほしいという話も出てきた。もちろんそのようなことを無視して支払わないという選択もできたと思うが、一時凌ぎでしかない。
顧問弁護士に情報提供と、いざという時のための事前相談に
そして顧問弁護士には事前情報の提供と、いざとなった時の大まかな流れ、タイムリミットの考え方についてのアドバイスを聞くために訪問のアポイントを取った。
訪問するとまずは、いざとなった時に会社をどうしたいのか。「民事再生なのか破産手続きなのか」を聞かれた。
もちろんその時点ではまだ経営継続に望みを持っていたし、民事再生を選択できるかどうかの検討もしていなかったので返答を留保した。
その他にはどのような債権者がいて、概ねどの程度の債権額なのか。そして現在の資金状況を聞かれた。
そして民事再生か破産手続きかは別として、事業停止予定日から遡って1週間前には連絡してくださいとのことだった。
しかしこの1週間前というのは、長年のお付き合いで、ある程度当社のことを知っていたことと、訪問の際に事前に指示されていた多くの資料を持参していた上での期間だと思う。
最後に弁護士から
・一部の債権者のみに支払いをしないこと。
・必要経費以外、たとえばパソコンなど新たに購入しないこと。
と釘を刺をされた。
多額のお金がないと倒産もできないことを身をもって知った
この時に感じたことは、立場によって決断の時、「デッドライン」の考え方が大きく異なるということだ。
一部の債権者は会社が資金を使い果たし、さらに社長が個人で借金をして、それでもどうしようもなくなった時がデッドラインだと考える立場を取る場合もある。
しかし顧問弁護士などは万が一の場合、会社が法に則って整理ができ、社長個人が生き続け、再起できることを前提にデッドラインを考える。
この時、会社を法に則って再生または整理をしようとした場合、多額のお金が必要だということも知った。
たとえば当社のように会社を清算する場合に最低限必要な費用としては
・従業員の給与(事業停止までの給与と、解雇予告手当として1ヶ月分)
・税金
・債務整理中の家賃や光熱費やその他の経費、残務整理する社員の日当
・弁護士費用
・裁判所に納める予納金(当社の場合は500万円だった)
ざっと数千万円は必要になる。
このお金がないと事業停止したら即、社員を路頭に迷わせ、法的整理ができないため個人保証をしている中小企業の社長は一生掛けても払いきれない借金を抱えることになる。たぶん生きていくことすら難しいだろう。
そしてこの時期、再生スキームの検討も行った。しかし社員の幸せな未来が見えてこない。
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