役員に同意を得て、弁護士に債務整理の受任を正式に依頼した
ついに事業継続を断念した。
ぼくは急遽、地方への出張をキャンセルし、午前中に役員に時間を取ってもらい、事業継続を断念することを話した。
皆、「ついにこの日が来たか」という表情で聞きながら、何も言わずに承知してくれた。
そして、これから事業停止までの10日間にすべきこと、また事業停止後にすべきことを説明していった。
役員への説明が終わると今度は、誰にも聞かれてはならないため、駐車場に止めてあった車の中に移動し、弁護士に電話を掛け
「もしもし、先日ご相談しました件ですが、正式に受任をお願いしたいと思います。」と告げた。
それは事業停止の7営業日前だった。
業界の仲間や取引先の皆さんのお陰で一番の気がかりが解決した
その日の午後、ぼくは自宅近くの家電量販店の駐車場にいた。
社員の再就職先を確保するために仲間の経営者や経営幹部の人たちに電話を掛けるためだ。薄暗い会社の駐車場から電話をかける気にはならなかった。
「突然の話なんですけど、来週債務整理に入ることにしたんです…。そこでお願いなんですが、何とか社員を一人でも二人でも引き受けてもらえないでしょうか。」
ただ事ではないと感じてくれた某上場会社の役員である友人が、土曜日だというのに社長に連絡を取ってくれて、週明けの月曜日に社長と一緒に会ってくれることになった。
「どうもありがとう。よろしくお願いします!」祈る思いで電話を切った。。
そして翌日からは取引先への影響を最低限にするため、いくつかの信頼のできる同業界の友人を訪問してまわった。
そして債務整理に入ること、その直後から取引先への商品の供給をお願いしたいこと、困ったことがあれば相談にのってあげてほしいこと等をお願いした。
中には債務のある取引先もあったが、ありがたいことに皆さんが快く引き受けてくれた。
その際、「社長ご苦労されましたね。社長は大丈夫ですか?」と心配して声を掛けてくれる方も何人かいた。
そして週が明けた。
月曜日の朝、社員の再就職をお願いしていた某上場会社に訪問した。
会議室に通され、間もなく社長と役員二人が入って来て、「社長、大変でしたね。」と声を掛けてくれた。早速状況の説明とお願いをすると社長から
「わかりました。社員さんは全員うちで引き受けましょう。その他、困っていることがあれば何でも言ってください。」と全員の受け入れを約束してくれた。
その他にも「大丈夫ですよ。引き受けた社員さんは大切にしますから遠慮なく言ってください。」と言ってくれた友人の経営者もいた。
こうして気がかりであったことに目処をつけたことにより、今後どんな現実が待ち受けているのか。そんな得体の知れない恐怖に挑む勇気を与えてもらえた。
それから事業停止までの約10日間、管理本部は弁護士と打ち合わせをしながら様々な準備を行っていった。
社員に集まってもらい状況の説明。そして全員の解雇を告げた
そして債務整理開始の朝、社員全員本社の会議室に集まってもらい、淡々と会社の状況説明、そして社員の再就職先のことなどを話し、本日付で全員が解雇になることを告げた。
社員たちは黙ってぼくの話を聞き、話しが終わると誰一人として言葉を発することなく会議室を出て行った。
そして昼の12時に本社の鍵を閉め、営業を停止し、午後の3時に弁護士事務所から債権者にファックスで通知した。
テレビ等では会社の入り口に貼り出すのを見たことがあるが、当社の場合このような方法で債権者への通知を行った。
この日の朝から異常を感じ取った銀行の担当者が何度か「管理本部長か社長はいますか?」と当社に来られていた。
この担当者はいつも親身になって相談に乗ってくれ、当社を応援してくれていた人だ。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
事業停止と同時に破産手続きに入ることもあるようだが、当社の場合はまず弁護士から債権者に債務整理に入ることを通知すると同時に営業を停止し、資産を保全し、その後に民事再生か破産手続きに入るのかを検討することにしていた。
この弁護士の受任通知により、債権者による取り立ては停止され、一切の窓口が代理人である弁護士になった。
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