入室して来られる方々に目をやりながら開始を待った
弁護士や破産管財人からは破産申立から終結までは10ヶ月前後かかり、その中で債権者集会は2回から3回行われるだろうと聞いていた。
残務整理が進み管財人による財産の調査が概ね終わった頃、事前に弁護士から期日の打診があり、破産申立から約4ヶ月後に第1回目の債権者集会が行われた。
この時期のぼくは生活のため、すでに新しい仕事を始めていたので、債権者集会には仕事を抜け出して出席した。
地方裁判所に到着すると、債権者集会に来た人なのか、またはその日に行われる裁判に来た人なのか、たくさんの人でごった返していた。
開始の20分前に1階受付前で顧問弁護士と待ち合わせをしていたので、一緒にエレベーターで債権者集会が行われる階まで上がり、会場に入った。
すでに管財人と数名の債権者が席に着いていた。
債権者集会はよくテレビ等で見る記者会見のような形式だった。
ぼくは管財人に軽く挨拶をした後、正面の席に座り、入室して来る債権者に目をやりながら開始時間を待った。
1回目の債権者集会は30分ほどで終了した。
金融機関、取引先、FC加盟店といった債権者が15人ほど集まり、時間になると裁判官の他、書記官など数名が入って来て債権者集会が始まった。
事前に経緯の説明とお詫びをしたいと弁護士にお願いしていたところ、「債権者集会はそのような目的ではないですが、管財人から挨拶を促されるので、手短に話してください。」と言われていた。
しかし、結局一言も発言する機会は与えられなかった。
先ず裁判官から、あらかじめ報告を受けていたのであろう配当の見込みと、今後の予定について簡単に説明された。
次に管財人から財産調査結果が記された書面が配られ、内容の説明と具体的な配当の見込みが説明された。
そして質疑応答が始まった。
「配当について会社に帰って報告をしなければならないので、もっと分かりやすく説明してください。」
という年配の役員の方や
「支払いの請求書が来ていたので、当社はきちんと支払いましたが、他の皆さんはどうされたんですか?」
など、いくつか管財人に対して質問があった。
しかし、ぼくに対しての質問などはなく、穏やかな中で進行した。
そして最後に裁判官から次回の期日が提案されて、1回目の債権者集会は30分ほどで終了した。
1回目はすべての債権者に債権者集会開催の通知が送られたが、2回目以降は特に通知はされないとのことだった。
会場を出ると親しくしていた取引先の社長から
「落ち着いたらまた飲もうよ。」
と声を掛けてもらい
「ご迷惑をお掛けしました。ありがとうございます。」
と短く言葉を交わし、弁護士と打ち合わせの後、帰路についた。
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