資本政策を教えられた運命の日
話しはサラリーマン時代に戻るが、当時のぼくは、様々な飲食店の企画を行う会社の営業として、数多くの店舗のオープンに関わっていた。
ある時期IPO(新規株式公開)を控えたベンチャー企業が、店舗関係の新規事業を計画していて、そのプロジェクトに食い込もうと売り込みをかけていた。
結果めでたくそのプロジェクトに参加することができ、それがきっかけでその会社の社長と親しくさせていただくことができた。
お付き合いしている中で「◯◯君、君いいもの持っているから独立してなんかやったらいいのになぁ。そしたら出資してやるぞ。」と何度か冗談交じりに言われていた。
最初のうちは独立する気なんてさらさらなかったが、仕事も遊びもダイナミックで、いつも楽しそうなその社長を見ていると、憧れを抱かずにはいられなかった。
ある日社長室を訪ねていたら、社長が突然、ホワイトボードに向かって講義を始めた。「いいか、1株5万円、200株、資本金1,000万円の会社が、株式をこう分割して、ここで新株を発行して増資を行う…。そうするとこの時点で資本金が◯億円になって…。」
IPOまでの資本構成と資金調達「資本政策」の話しだった。
わかったような、わからなかったような、狐につままれたような不思議な感覚、しかしどきどきするような小さな高揚感に包まれた。(ぼくにもダイナミックに事業ができる可能性があるのかもしれない…)
まさに自分にとって運命を変える出来事だった。
その後勤務先の会長から退職の許しが出て、この社長に挨拶に行くと「お前、本当に辞めちゃったのか?!よし出資してやるから1年後、黒字にしたらまた来い。」と。(あれ?出資してくれるんじゃなかったでしたっけ?)いろいろお話を聞かせてくれて帰路に着いた。
弁護士と公認会計士を顧問に
そして1年後、フランチャイズのオープンを数件手掛け、黒字で決算を終えたぼくは、再度その社長を訪ね「社長、黒字にしましたよ。出資してくれるって言いましたよね。」
「本当か?!ハハハ、確かに言った。(少し間をおいて)よし!先ずはこれからお前の力になってくれるだろうやつを紹介してやる。」と言ってその場で携帯電話を取り出すと「もしもし◯◯君、紹介したい社長が今来ているんだけど、いつ頃時間取れる?」
かけてくれた電話の相手は、法曹界で将来を有望視されていた若手の弁護士と、若くしてベンチャー企業のCFOとして上場に導いた公認会計士だった。
早速ふたりには顧問になってもらった。
そしてそのふたりとの運命の出会いから1年後、初の直営店が成功してIPOを考え始めるようになった時、公認会計士のその人にそれを告げると、早速今後のスケジュール、そしてまずは事業計画と資本政策の作成を支援してもらうための見積もりを出してくれた。
その時「資本政策は会社主導で周到な準備の上で行わなければダメですよ。”資本政策は後戻りできない”ですからね。」と教えてくれた。
IPOに向けての3点セットの策定
資本政策の目的は
1. 資金調達
2. 株主利益の適正な実現
3. 株主構成の適正化
端的に説明すると、今後事業を成長させていく上で、いつの時点でどれくらいの資金が必要で、その時に引き受けてもらう株価をいくらにするか、持ち株比率をどうしておくかをあらかじめ計画を立てておくものだ。
これによりオーナーであるぼくは創業者利潤を実現させることもできる。(もちろんIPOできればの話だが。)
また社長が1,000万円しか出資していない会社が、外部から数億円を調達しても、社長の高い持ち株比率を維持する。こんなムシのいいことが合法的にできることも知った。
早速、資本政策の前提となるIPOまでの
1.事業計画書
2.利益計画書
の作成を始めた。
事業計画書・利益計画についての計画期間は5年間が望ましい。というのは3年間でいいという引受先もあるが、投資を検討するためには5年間が必要だというところが必ずあるからだ。
事業計画の内容は
1.会社概要
2.経営方針
3.事業の概要
4.事業戦略
5.経営組織と体制戦略
6.収益計画
7.リスクファクターとリスクマネジメント
8.競合企業
9.業界動向
などで、これをワードで作成した。
大手ベンチャーキャピタルに投資を検討してもらえるボリュームのレベルはどれくらいかというと、最低50〜60ページは必要だと思う。
利益計画はというと、事業計画書をもとに決算期ごとにエクセルで作成する。表紙もつけた方がいい。また事業計画内の計画数値と利益計画の数値は一致させる。このように事業計画と利益計画が出来上がると、いよいよ資本政策の作成ができる。
資本政策作成時に考えることのひとつとして、ベンチャーキャピタルなどから出資してもらう前に、これまで頑張ってくれた役員・社員、これまでお世話になった取引先、今後ビジネスを発展させていくために力になってほしい会社や個人へ、株価が低いうちに株を持ってもらうことだ。
もちろん事業は必ず成功するとは限らないので、安易に、または無理強いはしてはいけないが、事業の成功に確たる自信があるならば、資本政策は後から後悔してもやり直しができないので検討してみた方がいい。
それはIPOできれば恩返しにもなるし、このような人たちは会社の応援団として会社の発展に力を貸してくれ、IPO後も安定株主としてある程度株を保有してくれる可能性のある人たちだからだ。
そのような考え方から当社は6年後にIPOを計画し、その間9回の増資等を行い、総額約3億3,000万円を調達するという資本政策を組んだ。
「事業計画書」「利益計画書」「資本政策」の3点セットを完成させいよいよ投資勧誘を開始した。
参考URL:資本政策(IPOの基礎 EY Japan)
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